「信頼」という資本が足りない韓国

発信時間:2013年07月22日08時08分              月曜日

無人の販売台

日本石神井台4丁目で 尾崎さんの無人販売所

欧州研修時代の2004年夏、家族と共にノルウェーで自動車旅行をした。田舎道を走っていたとき、果樹園で実ったチェリーを売る無人の販売台が、道ばたにずらりと姿を現した。「1袋2ユーロ(現在のレートで約260円、以下同じ)」という値段表示と硬貨を入れる箱があるだけで、人はいなかった。1袋買って箱の中をちらりと見てみると、硬貨や紙幣がぎっしり入っていた。
韓国でも、田舎道を通れば、農家の人がマクワウリ、スイカなどを並べて売っている光景をしばしば見かけるが、無人販売というスタイルは想像し難い。「韓国も無人販売で運営できれば、その時間に別の仕事ができ、生産性をもっと高められるのに…」

韓国の田舎

2011年5月、冬季五輪(2018年)候補地に関する国際オリンピック委員会(IOC)の評価会を取材するためスイスのローザンヌを訪れたとき、こんな出来事に遭遇した。予約していたホテルにチェックインすると、従業員が「宿泊客に提供する地下鉄の乗車券だ」と言って名刺サイズのカードを出し、有効期限をボールペンで書き込んだのだ。「最高の先進国で、紙のカードに手書きだなんて…」。ところが地下鉄を利用してみると、改札口もなく、駅員もおらず、カードを見せることはなかった。「こういうシステムなら、料金徴収システム、改札口といった施設を持たなくてもよく、その資金をほかに投資できる…」

乗車券….「最高の先進国で、紙のカードに手書きだなんて…」……(^-^)..!

韓国は資本主義社会だが、資本になるのはカネだけではない。社会・文化資本というものもある。社会の構成員間の信頼は社会資本(ソーシャルキャピタル)に属し、経済資本とは異なりいくら使っても枯渇しない(フランスの哲学者ピエール・ブルデューの主張)。米国の政治思想家フランシス・フクヤマは「信頼」の価値を特に重視し「一国の競争力は、その社会が固有のものとして有している信頼の水準によって決まる」と語った。
韓国は、世界で7番目に人口5000万人、国民1人当たりの国民所得2万ドル(約200万円)の双方を達成したと誇っているが、信頼資本の面ではまだ道のりは遠い。
信頼がない場合、社会がどのような費用を負担するかは、慶尚南道密陽の送電塔をめぐる一件を見れば分かる。住民、韓国電力、与野党から推薦された専門家が「専門家協議会」を結成し、40日にわたって研究・検討を行い、複数の専門家が「迂回(うかい)送電」や「地中化」は技術的に難しいという結論を出した。しかし住民らは報告書の内容を信用せず、受け入れなかった。

クレジットカードの債務不履行者も多い

その結果、来年3月ごろに完成する新しい原子力発電所には送電線がなく、無用の存在になりかねない状況に置かれている。40日間工事が止まったことによる損害は2800億ウォン(約249億円)に上るという。この資金を信用不良者(金融債務不履行者)の救済に使えば、2万2000人(国民幸福基金申請者1人当たりの負債額を基準にして計算)を借金のどん底から救い出せる。信頼資本を積み上げるためにはどうすべきか。フクヤマによる「信頼」の定義に、その答えがある。「信頼とは、コミュニティーの構成員たちが共有する規範に基づいて規則を守り、誠実に、そして協力的に振る舞うということについて、コミュニティー内部に生じる期待である」。信頼の出発点は、構成員が法(最小限の規範)を守ることだ。常識的な話だといわれるかもしれないが、常識が尊重される社会が先進国というものではないだろうか。…… (金洪秀…韓国経済部次長)

経営理念 : 信頼と絆

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